こちらは東日本大震災復興支援・チャリティ小説同人誌『文芸あねもね』公式ブログです。
最新情報や執筆者&内容紹介など随時更新しています。
「女による女のためのR-18文学賞」過去受賞者(+α)で
「少しでも東日本大震災被災者の力になれれば」と話し合った結果、同人誌をつくることになりました。
2011年7月15日より2012年2月24日まで、電子書籍サイト・パブーにて電子書籍版を販売、
その後紙の書籍として新潮文庫に入る運びとなりました。
現在、朗読プロジェクト「文芸あねもねR」も進行中!
【執筆者一覧】
彩瀬まる・豊島ミホ・蛭田亜紗子・三日月拓・南綾子・宮木あや子
山内マリコ・山本文緒・柚木麻子・吉川トリコ(五十音順/敬称略)
■イラストレーション/さやか ■デザイン/山口由美子
※参加者の詳細は「プロフィール欄」をお読みください。
※この企画の成り立ちについては「はじめに」をお読みください。
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記事掲載のお知らせ
2011.11.28 Monday | category:過去のお知らせなど
こんにちは。豊島ミホです。
すっかり寒くなりましたね。
「文芸あねもね」発売時は夏だったのに、いつの間にか空気がヒンヤリ……。
そして「あねもね」は地味〜〜に地味に、販売数を伸ばしています。
このブログでの告知記事が少なくなったことからおわかりいただけるように、
最近は「あねもね」の名前がメディアに登場する機会があまりありませんが、
それでも、新規にスマホを購入された方や、パブーを見つけた方が
目に留めて下さっているのかもしれませんね。
そんな中、本日発売の「MORE」1月号、2011年の本を総括する特集に
「文芸あねもね」が登場するとのタレコミを頂戴しました!
やったね!
実は私は「MORE」読者です……
「もういい加減30になるんだから卒業して次の雑誌に行かないと……」
と今年前半でいったん離れたんですが、金銭的な問題によって
また戻ってきてしまいました。
好きなブランドは「ロペ ピクニック」な典型的MOREっ子です……。
もちろんさきほどわくわくしながら最新号をGET!
いつもは大人しく巻頭から読むところ、まっさきに目次からチェックしました。
「決定★MOREガール50万人のBOOK大賞」……これかっ?!
該当するページに飛んでみると……ありました!
マンガも含むそうそうたるヒット作にまぎれて、我らがあねもねちゃんが。
ひ、左隅(ランキング圏外)に……。
「ツウのイチ押し!」というミニコーナーで選んでいただいております。
でもすごいよ。「人生がときめく片づけの魔法」とかと一緒に載っているんだもの(泣)
ちなみに頼まれてもいないのに宣伝すると
なんと1月号には石井ゆかりさんによる年間星座占いも載っています!
今やオールジャンルの雑誌で引っ張りだこの石井さんの年間占い。
MOREでは年間の運勢概観のほか、「2012年・春の一文字」として
今年の春の星の転換期を石井さんが星座別に漢字一文字であらわしたものも読むことができます。
必見!
すみません、本題からだいぶ話がズレました。
「MOREガール50万人のBOOK大賞」では、「心に響いた本ベスト20」のほか、
恋に効く本/仕事に効く本などの「部門別サプリBOOK大賞」として
2011年刊の色んなジャンルの本が紹介されていますので、
お洋服と本(と星占い)を同時にチェックしたい! という方は
ぜひお手にとってみて下さいね。
*
2011年もそろそろ締めに向かっていますね。
きっと色んな人にとって大きな、1年だったと思います。
もちろん、私にとってもそうでした。
心穏やかに2012年を迎えられるといいな、と思っています。
(文責・豊島ミホ)
文芸あねもね物語〜終点のあの子編〜
2011.11.26 Saturday | category:文芸あねもね物語
もし、文芸あねもねと「終点のあの子」がミックスしたら、きっとこんな感じ……。
* * * * * * * * *
柚木麻子作「終点のあねもね」
私の名前は奥沢朱里(15)。都内のお嬢様女子校に通ってるの。パパは有名カメラマン、個 性的でセンスの鋭い私は、クラスの注目の的。人の顔色ばっかりうかがっている同級生にはうんざり。早く自分を自由に表現できる場所にいきたいわ
そんなある日だった。隣のクラスの優等生、彩瀬まるとかいう子がやってきたのは。
「奥沢さんって作文得意よね? ねえ、よければ私達『文芸あねもね』を 助けてくれない」
群れるのは苦手だけど文章には自信があるし、クラス以外の場所でちやほやされるのは悪くない。
「いいわよ、手伝ってあげても」
まるが案内したのは図書館の奥にある小部屋。ドアを開けた三年生を見て、私は嫌な気がした。
「初めまして、私は部長の宮木あや子」
言われなくても知ってる。人とつるまず小説ばかり読んでいるくせに、彼女は学園のプリンセスだった。校内に多数の信者がいるという。 あまり近づきたくないタイプね。
部屋の中央にあるテーブルを、六人の女の子がずらりと取り囲んでいた。パソコンから流れているのは、クラスメイトが好むようなジャニーズの曲。ふん、宮木 先輩も所詮はふつうの女の子と一緒の趣味じゃない、と私は少しだけ安心した。
「あなたが奥沢さん?私は副部長の吉川トリコ」
フレンドリーに笑いかけた上級生を見て、また不愉快になった。ダサい制服をこんな風にシックに着こなす子が自分以外にもいたなんて。
「声をかけたのは他でもないわ。今度こんなものを売り出すのよ…。書き手が一人足りなくて助けて欲しいの」
そう教えてくれた美少女は蛭田亜紗子。チャリティと聞いて、私はすっかりやる気をなくした。そういうのって偽善的だし、好きじゃない。
「ここにいる八名と顧問の山本文緒先生にも短編を書いても らうの。でも、一年の柚木麻子っていう子が今、停学くらってるせいで参加できなくなったの?」
停学? 問題児も自分一人で十分なのに。
「もう十名って発表しちゃったからさ〜。奥沢さんの書いた漫画、うちのクラスにも回ってきたよ〜。天才だよね。是非、その力を『あねもね』で生かして欲し いなあ。さすが奥沢エイジさんの娘」
隣に座っていたちょっとギャルっぽい子に褒めそやされ、少しだけ気を取り直す。山内マリコとかいうんだっけ。
「ふうん。いいですよ。書いてあげても。面白そう」
私が胸を張ると、小さな部室は歓声と拍手に包まれた。いい気分。自分の才能を見せつけるいいチャンスだ と思った。
それから一週間ーー。
私は一行も書けないまま、ふてくされて部室の戸をたたいた。いざパソコンに向き合うと何の言葉も出て来なかった。
「はあ? 約束と違うじゃん」
形のいい眉をひそめたのは、クールな一匹狼の南綾子先輩だ。
「どうして書いてこないのよ」私は唇を噛み締め、女の子たちをに らみつけた。なによ、文系乙女を気取っているくせに、ここも教室と一緒だ。人と違うことを許せない。枠からはみ出す子をいっせいに糾弾する。
「仕方ないでしょ。書けない時は書けないって」
やんわりと割って入ったのは、見知らぬ上級生だ。誰だっけ。
「書けないなんて言ってません。書かなかっただ け」
むっとして言い返すと、隣のクラスの三日月拓とかいう子が耳打ちしてきた。
「伝説の豊島先輩にそんなこと言うのやめなよ」
としませんぱい? え、豊島ミホ?
思い出した。私は目の前のすらりとした女の子を呆然と見つめる。去年、さる文芸誌の新人賞を最年少で受賞した、本物の有名人。受験勉強優先ということでそ れきり執筆をしていないのが、いっそうスター性を高めている。私はくやしくなった。こんなことなら、どんなに拙い作品でも提出すればよかった。
怖かったのだ。思ったより大したことないじゃん、お父さんほどの力はないんだよね、本当はフツーの子じゃない……。そんな風に笑われるのが。なにより何が 何でも表現したいものが自分の中にないことに気付かされショックだった。すべてを見透かすように豊島先輩は優しく微笑んでいて悔し涙が滲んだ。
その時、ドアが音を立てて開き、山内マリコが息をきらせて、駆け込んできた。
「見つけました!代打をやってくれる十人目の執筆者です!」
遠慮がちに入室した女の子を見て、私は息をのんだ。
同じクラスの保田早智子! クラスで最もイケてないグループに所属するダサ女子ではないか。なんで彼女が…。
「保田さんの仕上げた短編、面白いんですよ〜。そのまま載せられるレベルです。漫研もやってるから、絵も描けるし」「わあ、救世主ね!」「ようこそ、保田さん!」 「ビバ!あねもね」
部員にわっと取り囲まれ、保田早智子は恥ずかしそうに笑っている。私は黙って席を立ち部室を後にした。もう二度と 「文芸部あねもね」になぞ関わるものか。私が認められる場所は他にある。ドアを乱暴にしめても女の子達の歓声にかき消され、私が出て行ったことに誰も気付 かないみたいだった。(了)
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以上、まいどおなじみの柚木麻子おはなしツイートでした。「文芸あねもね」まだまだ、よろしくお願いします!そして、プライドが高く傷つきやすい朱里がその後どうなったのかはこちらをどうぞ!