こちらは東日本大震災復興支援・チャリティ小説同人誌『文芸あねもね』公式ブログです。
最新情報や執筆者&内容紹介など随時更新しています。
「女による女のためのR-18文学賞」過去受賞者(+α)で
「少しでも東日本大震災被災者の力になれれば」と話し合った結果、同人誌をつくることになりました。
2011年7月15日より2012年2月24日まで、電子書籍サイト・パブーにて電子書籍版を販売、
その後紙の書籍として新潮文庫に入る運びとなりました。
【執筆者一覧】
彩瀬まる・豊島ミホ・蛭田亜紗子・三日月拓・南綾子・宮木あや子
山内マリコ・山本文緒・柚木麻子・吉川トリコ(五十音順/敬称略)
■イラストレーション/さやか ■デザイン/山口由美子
※参加者の詳細は「プロフィール欄」をお読みください。
※この企画の成り立ちについては「はじめに」をお読みください。
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寄付のご報告(その1)
2012.04.27 Friday | category:寄付額のご報告
新潮文庫版『文芸あねもね』が発売されて2ヶ月が経ちました。
電子版とあわせて、ご購入下さったみなさまのおかげで、
震災復興支援のための寄付金を、多く集めることができました。
以前の記事でも電子版の寄付額については言及していますが、
今日は紙の本の分と合わせまして、ここまでの寄付報告をさせていただきたいと思います
(ちょっとおカタい記事です! でもお金の話は大事ですよね)。
*
まずは以前報告したことの繰り返しを含んでしまいますが、
電子版『文芸あねもね』についてです。
これは、7月15日に「ブクログのパブー」さんの
東北地方太平洋沖地震チャリティ企画の1冊として販売を開始しました。
定価380円で、通常パブーさんの分になる販売手数料3割を含め
全額が寄付金となる、というふとっぱらな企画でした。
企画は1月31日販売分まで続けられ、
この期間に販売させていただいた電子版「あねもね」は、818冊になりました。
380円×818冊=310,840円を、みなさまから義援金としていただいたことになります。
この分は、パブーさんから同じ企画の他の本の分と合わせて、寄付されています
(ですので、私たちの元には寄付金の受領書などはありません)。
寄付の経過につきましては、こちらをご覧下さい。
また、チャリティ企画が終了した2月1日以降も、
電子版の「あねもね」は、文庫版の発売日である2月24日まで
引き続きパブーにて販売させていただきました。
この期間にお買い上げいただいた冊数は23です。
定価380円のうち、販売手数料である3割を引くと、
私たちが受け取る1冊当たりの印税は266円でした。
2月分の印税は、266円×23冊=6,118円です。
これは、チャリティ企画の期間の印税とは異なり、
いったん私たちの手元に渡ります。
先日受け取りまして、
日本文藝家協会の「東日本大震災被災者救援基金」に全額を寄付させていただきました。
こちらがその領収証になります。

(※住所等の個人情報を消すために画像を処理させていただいております、以下2枚の振込受付書も同じく)
日本文藝家協会、というのは、みなさん聞き慣れない名前であるかもしれませんが、
文筆家の職能団体のひとつで、決してうさんくさい機関ではありません(日頃からお世話になっております……)。
今回の基金は手数料などを引かず、「毎日奨学金」にお渡しして下さるとのことです。
1冊当たりの寄付額と寄付先が、1月末を境目に分かれてわかりづらくなってしまい、申し訳ありませんが、
以上が電子書籍版『文芸あねもね』にいただいた金額と、その寄付先のご報告になります。
電子版ではあわせて841部を販売し、
316,958円を、東日本大震災支援のための寄付金として納めさせていただきました。

証明……というほどでもないですが、電子版「あねもね」を下ろす直前のデータが上の画像です。
*
続いて、新潮文庫に関する寄付金のご報告です。
こちらは、著者印税分を、新潮社さんが一括で日本赤十字社さんへお渡しして下さいました。
(なにしろアンソロジーですので、10分割して執筆者の手元へ渡してもらい、
そこからまた10人分を集めて寄付、というのも手間がかかりますので……。)
消費税抜きの価格670円×初版部数20,000部=1,340,000円を、文庫印税として寄付しております。
領収証ではなく振込受付書のコピーですが、こちらご参照下さい。

また、3月に開催いたしました池袋リブロさんでの「文芸あねもね」トークイベントも、
一部寄付と告知させていただきましたが、
最終的に売上の3割を寄付いたしました。
1000円×44席×0.3=13,200円となっております。
こちらも上と同じく、新潮社さんから日本赤十字社さんへお渡ししていただきました。

(※FAXで頂戴したため、受付証の画像が粗くなっております。ご了承下さい。)
したがって、これまでに、
電子版と紙の本の印税、それにイベント収益の一部をあわせた
1,670,158円を、みなさまからの寄付金として、
被災地に繋がる窓口にお届けしたことになります。
本をお買い上げ下さったみなさま、イベントにお越し下さったみなさま、どうもありがとうございました!
あとはこのお金が、有用に使われるように願うばかりです。
執筆者・デザイナー・イラストレーター一同、そう願っております。
*
昨年4月24日にスタートしたこの「文芸あねもね」公式ブログですが、
このご報告をもちまして、いったん更新をお休みさせていただきます。
Twitterのあねもねアカウントは、本日23時頃をもちまして、閉鎖となります
(Twitterアカウントをフォローして下さったみなさま、広報にご協力下さったみなさま、
感想をお寄せくださったみなさま……今までありがとうございました!!
こちらからのDM、リプライなどもアカウント削除と同時に消えてしまいます旨、ご了承下さい)。
また、電子版の販売に利用したパブーのアカウントも、
今後利用する予定がないため、削除させていただきました
(読者登録して下さっていた方、申し訳ありません!)。
ですが、「あねもね」はここで終わりではありません。
『文芸あねもね』はこれからも、書店の新潮文庫の棚におさまっていますし、
まだまだ、これから、色んな方に読んでいただきたいとメンバーは考えています。
もちろんすでにお買い上げ下さった方にも、長く楽しんでいただけましたら幸いです。
ですから、今回は終わりのご挨拶のようなものはいたしません。
みなさま、これからも『文芸あねもね』をよろしくお願いいたします。
また、何か良いことをお知らせできますよう。
このブログが次回更新された時、その情報をTwitterでキャッチしたい! という方は
執筆者の誰かをフォローしてみて下さい(私を含め、Twitterユーザーでないメンバーもおりますが……)。
多分情報が流れてくると思います。
*
最後になってしまいましたが、ご紹介への御礼です。
連載コラム「気まぐれな本棚」の中で『文芸あねもね』に触れて下さいました。
また、24日のFMヨコハマ「books A to Z」のコーナーでは
アナウンサーの北村浩子さんが、
「ばばあのば」のストーリーダイジェスト込みで
こってりめの「あねもね」紹介をして下さいました。
どうもありがとうございました!
読んで下さるだけでも嬉しいのに、
こうして「あねもね」のことをご紹介いただけるのは大変幸いです。
ブログが休止になるため、今後はこのようにひとつひとつ
御礼を申し上げていくことができなくなってしまいますが、ご了承下さい
(もしなんらかの形でお知らせいただければ、みんなできゃっきゃ言って喜びます!!)。
それではみなさま、改めまして、『文芸あねもね』へのご協力、ありがとうございました。
(文責・豊島ミホ)
宮木あや子『学園大奥』、女子学生アンソロ『あのころの、』発売中!
2012.04.09 Monday | category:あねもね作家の新刊紹介
こんにちは、彩瀬まるです。
だいぶ桜が咲いてきましたね。
うちの近くの公園では、幼稚園児を連れたママさんたちが、ビニールシートの端に大五郎をドーンと据えた剛毅な花見をしてました。
本日は、春の夜にお茶をすすりながら読むのにぴったりな、新刊二冊をご紹介にあがりました。
一冊目。宮木あや子著『学園大奥』(実業之日本社刊)。
宮木あや子、と言われれば『花宵道中』、『雨の塔』、『白蝶花』など、耽美で艶やかな作品世界を連想する方が多いのではないでしょうか。時代や環境に囚われて生きる女たち。気高く痛ましい少女たちを眺める陶酔感と、胡椒の粒を噛んだような背徳感を、私はいつも楽しんできました。
『学園大奥』は、そんな宮木あや子が中学生の少女を主人公にして、戒律の厳しいミッション系の女子校を舞台に描いた恋愛小説……ではありません!
主人公・和実は、スポーツの苦手なおデブちゃん。彼女はきらびやかな百合への憧れを胸に、苛酷な受験戦争をくぐり抜けて「中の丸女子学園」へ入学します。けれど登校した彼女を待ち受けていたのは、二人の美しい王子様を取り巻く女たちのめくるめく権力争い、「大奥」の世界でした。
素直さが取り柄のヒロインが学園の王子様に見初められ、様々な脇役のイジメに晒されながらも健気な思いを貫き通し、最後には王子様と結ばれる……といった学園ラブコメの王道を、この『学園大奥』はことごとく覆していきます。
とにかくこのヒロインが強い! 幼なじみの男の子・鼻くそギルバートに「クソ虫」と呼ばれても、外部生ゆえに学園でイジメを受けても、痩せなくても、けしてへこたれません。友だちと団結して活路を見出し、自分を認めない人たちの中にぐいぐい浸透していきます。
主人公を囲むキャラクターも、鼻くそギルバートや銀歯ちゃん、ガラパゴス、テフロンなど、名称だけでも濃さが分かって頂けるのではないでしょうか。テンポの良い細やかなギャグに大笑いした後、ふとした瞬間に現れるキャラクターたちの生活感に胸を衝かれます。きれいになれない、みんなの中に溶け込めない、自分を攻撃してくる人がいる、好きな人に近づけない、身近に不幸な人がいる。じゃあ、どうしよう。どう考えよう。
そんな生活の中で現れる無数の段差を、一つ一つ、「ギャー!」とか「死ね!」とか叫びながら、主人公は上っていきます。
読んでいる間はずっと、「負けるな!」「笑え!」という力強い作者の声が行間から響いてくるような気がしました。
とびきり疲れた夜、しょぼくれた夜、お気に入りのお菓子やお酒を手に『学園大奥』を開いてみて下さい。きっと元気になれます。
*
二冊目。女子学生アンソロジー『あのころの、』(実業之日本社刊)。
執筆者 窪美澄、瀧羽麻子、吉野万理子、加藤千恵、柚木麻子、彩瀬まる。
ついに出てしまいました……。
ちょっとレビューを横に置いて、ぶっちゃけ話をしてもよろしいでしょうか。
このアンソロの原稿、本当に、本当に、本っ当に……! 書くのがプレッシャーでした。
だって見てください、私以外の豪華メンバー。じわりと染みいるほっこり系から、胸に釘を打つ叙情系まで、それぞれすでに自分の作品世界を構築されている先輩方ばかりなのです。
『晴天の迷いクジラ』の窪美澄、『うさぎパン』の瀧羽麻子、『想い出あずかります』の吉野万理子、『ハニー ビター ハニー』の加藤千恵、『終点のあの子』の柚木麻子……。
(最新刊を挙げているわけではないのは、私が特に思い入れの強い作品を並べているからです。著者さんすみません。でも好きなの)
こんな尊敬する先輩方に混ぜて頂けると知り、「うわあああ!」と舞い上がったのもつかの間、地獄の迷子が始まりました。なにを書いても、何度書き直しても、アンソロの足を引っぱってしまう気がしました。『文芸あねもね』もそうだったのですが、三回書き直したよ……ボツ原稿が倍ぐらいあったよ……。
と、エンドレスに続きそうな泣き言はこの辺にして、あまり参考にならないレビュー行きます!
1.窪美澄著「リーメンビューゲル」
透子とハルカは同じ女子校に通う友人同士。
仲良く放課後に買い食いをして、他愛もないことを語り合う彼女たちは、実はお互いに言えない「あること」を抱えています。
なんで言えないんだろう。どうして私はあの子みたいじゃないんだろう。
そんな喉につかえる迷いを抱えた少女たちの、小さな花が咲くような交歓の物語です。
読み終わったとき「ある食べもの」が無性に食べたくなっています。
2.瀧羽麻子著「ぱりぱり」
姉と私。外見はそっくりと言われても、中身はぜんぜん違う。
成長と共に、自分が見えて、姉が見えるようになって、愛していたものが愛せなくなる。心細さと、それを包むバタークッキーの匂い。耳へ残る、健やかな姉の声。
端正な文章を追ううちに、ほどよく日に当たった、気持ちの良い川に足を浸しているような気持ちになりました。
ぱりぱり(さてこれはなんでしょう)、ついつい、買っちゃいました。
3.吉野万理子著「約束は今も届かなくて」
吉野万理子さんの私小説。「遠い、けれど忘れられない友だち」の話です。
学生時代を振り返ったとき、あの人ともっと仲良くなりたかったなあ、と思う人って、いますよね。
そういう名残のある人って、自分にとってなにかしらの「憧れ」の要素を含んでいる人なのではないでしょうか。
成長し、大人になり、語ることを得るにつれ、どんどんその人に逢いたくなる。
お話を読み終えて、「私にもそういう人がいる」と、しんと切なくなりました。
4.加藤千恵著「耳の中の水」
仲良し四人組の女の子のお話です。ぎゅっと集まっていた四人が、少しずつ少しずつほどけていく。
ももいろクローバーZを聴きながら、主人公はじわじわと自分たちを取り巻く時間の流れを感じ取っていきます。
なつかしい、噛みしめると酸味と苦みが広がる、生々しい女子学生たちの会話。
ああ、変わる、みんな変わってきたなあと、教室を見回した高三の風景を思い出しました。
5.彩瀬まる著「傘下の花」
自分の話を紹介するほど照れくさいこともないのですが……。
転勤族の母子家庭で育った女の子が、温泉街の老舗和菓子屋の女の子に恋をする話です。
誰かを好きになると、その人の背後に続く、家族というものも見ることになる。
そんなお話になっていたらと願います。
6.柚木麻子著「終わりを待つ季節」
女子のなまぐささを書かせたらピカイチの柚木さん。今回もすごいです。
どこの女子校にも一人はいるだろう、「ファンクラブが出来るほど格好良い女の子」のお話です。
いましたよね、背が高くて、物腰が落ちついていて、スポーツが得意で、下級生から絶大な支持を集めていたあの子。
「○○、ちょーかっこいい!」と呼ぶたびにあの子が苦笑いをしていたわけが、十年以上経った今、この話を読んで初めて分かった気がしました。
まったくもって感覚的な、しょっぱいレビューですみません。
でも、どのお話もだいぶ方向性の違う、味の濃い作品であると、少しでもお伝え出来ていたら幸いです。
きっと「私の学生時代、こうだった」と親しみを感じて頂ける作品が見つかると思います。
『あのころの、』、本屋さんでお見かけの際には、どうぞよろしくお願いいたします!
(文責・彩瀬まる)
宮木あや子、と言われれば『花宵道中』、『雨の塔』、『白蝶花』など、耽美で艶やかな作品世界を連想する方が多いのではないでしょうか。時代や環境に囚われて生きる女たち。気高く痛ましい少女たちを眺める陶酔感と、胡椒の粒を噛んだような背徳感を、私はいつも楽しんできました。
『学園大奥』は、そんな宮木あや子が中学生の少女を主人公にして、戒律の厳しいミッション系の女子校を舞台に描いた恋愛小説……ではありません!
主人公・和実は、スポーツの苦手なおデブちゃん。彼女はきらびやかな百合への憧れを胸に、苛酷な受験戦争をくぐり抜けて「中の丸女子学園」へ入学します。けれど登校した彼女を待ち受けていたのは、二人の美しい王子様を取り巻く女たちのめくるめく権力争い、「大奥」の世界でした。
素直さが取り柄のヒロインが学園の王子様に見初められ、様々な脇役のイジメに晒されながらも健気な思いを貫き通し、最後には王子様と結ばれる……といった学園ラブコメの王道を、この『学園大奥』はことごとく覆していきます。
とにかくこのヒロインが強い! 幼なじみの男の子・鼻くそギルバートに「クソ虫」と呼ばれても、外部生ゆえに学園でイジメを受けても、痩せなくても、けしてへこたれません。友だちと団結して活路を見出し、自分を認めない人たちの中にぐいぐい浸透していきます。
主人公を囲むキャラクターも、鼻くそギルバートや銀歯ちゃん、ガラパゴス、テフロンなど、名称だけでも濃さが分かって頂けるのではないでしょうか。テンポの良い細やかなギャグに大笑いした後、ふとした瞬間に現れるキャラクターたちの生活感に胸を衝かれます。きれいになれない、みんなの中に溶け込めない、自分を攻撃してくる人がいる、好きな人に近づけない、身近に不幸な人がいる。じゃあ、どうしよう。どう考えよう。
そんな生活の中で現れる無数の段差を、一つ一つ、「ギャー!」とか「死ね!」とか叫びながら、主人公は上っていきます。
読んでいる間はずっと、「負けるな!」「笑え!」という力強い作者の声が行間から響いてくるような気がしました。
とびきり疲れた夜、しょぼくれた夜、お気に入りのお菓子やお酒を手に『学園大奥』を開いてみて下さい。きっと元気になれます。
*
二冊目。女子学生アンソロジー『あのころの、』(実業之日本社刊)。
執筆者 窪美澄、瀧羽麻子、吉野万理子、加藤千恵、柚木麻子、彩瀬まる。
ついに出てしまいました……。
ちょっとレビューを横に置いて、ぶっちゃけ話をしてもよろしいでしょうか。
このアンソロの原稿、本当に、本当に、本っ当に……! 書くのがプレッシャーでした。
だって見てください、私以外の豪華メンバー。じわりと染みいるほっこり系から、胸に釘を打つ叙情系まで、それぞれすでに自分の作品世界を構築されている先輩方ばかりなのです。
『晴天の迷いクジラ』の窪美澄、『うさぎパン』の瀧羽麻子、『想い出あずかります』の吉野万理子、『ハニー ビター ハニー』の加藤千恵、『終点のあの子』の柚木麻子……。
(最新刊を挙げているわけではないのは、私が特に思い入れの強い作品を並べているからです。著者さんすみません。でも好きなの)
こんな尊敬する先輩方に混ぜて頂けると知り、「うわあああ!」と舞い上がったのもつかの間、地獄の迷子が始まりました。なにを書いても、何度書き直しても、アンソロの足を引っぱってしまう気がしました。『文芸あねもね』もそうだったのですが、三回書き直したよ……ボツ原稿が倍ぐらいあったよ……。
と、エンドレスに続きそうな泣き言はこの辺にして、あまり参考にならないレビュー行きます!
1.窪美澄著「リーメンビューゲル」
透子とハルカは同じ女子校に通う友人同士。
仲良く放課後に買い食いをして、他愛もないことを語り合う彼女たちは、実はお互いに言えない「あること」を抱えています。
なんで言えないんだろう。どうして私はあの子みたいじゃないんだろう。
そんな喉につかえる迷いを抱えた少女たちの、小さな花が咲くような交歓の物語です。
読み終わったとき「ある食べもの」が無性に食べたくなっています。
2.瀧羽麻子著「ぱりぱり」
姉と私。外見はそっくりと言われても、中身はぜんぜん違う。
成長と共に、自分が見えて、姉が見えるようになって、愛していたものが愛せなくなる。心細さと、それを包むバタークッキーの匂い。耳へ残る、健やかな姉の声。
端正な文章を追ううちに、ほどよく日に当たった、気持ちの良い川に足を浸しているような気持ちになりました。
ぱりぱり(さてこれはなんでしょう)、ついつい、買っちゃいました。
3.吉野万理子著「約束は今も届かなくて」
吉野万理子さんの私小説。「遠い、けれど忘れられない友だち」の話です。
学生時代を振り返ったとき、あの人ともっと仲良くなりたかったなあ、と思う人って、いますよね。
そういう名残のある人って、自分にとってなにかしらの「憧れ」の要素を含んでいる人なのではないでしょうか。
成長し、大人になり、語ることを得るにつれ、どんどんその人に逢いたくなる。
お話を読み終えて、「私にもそういう人がいる」と、しんと切なくなりました。
4.加藤千恵著「耳の中の水」
仲良し四人組の女の子のお話です。ぎゅっと集まっていた四人が、少しずつ少しずつほどけていく。
ももいろクローバーZを聴きながら、主人公はじわじわと自分たちを取り巻く時間の流れを感じ取っていきます。
なつかしい、噛みしめると酸味と苦みが広がる、生々しい女子学生たちの会話。
ああ、変わる、みんな変わってきたなあと、教室を見回した高三の風景を思い出しました。
5.彩瀬まる著「傘下の花」
自分の話を紹介するほど照れくさいこともないのですが……。
転勤族の母子家庭で育った女の子が、温泉街の老舗和菓子屋の女の子に恋をする話です。
誰かを好きになると、その人の背後に続く、家族というものも見ることになる。
そんなお話になっていたらと願います。
6.柚木麻子著「終わりを待つ季節」
女子のなまぐささを書かせたらピカイチの柚木さん。今回もすごいです。
どこの女子校にも一人はいるだろう、「ファンクラブが出来るほど格好良い女の子」のお話です。
いましたよね、背が高くて、物腰が落ちついていて、スポーツが得意で、下級生から絶大な支持を集めていたあの子。
「○○、ちょーかっこいい!」と呼ぶたびにあの子が苦笑いをしていたわけが、十年以上経った今、この話を読んで初めて分かった気がしました。
まったくもって感覚的な、しょっぱいレビューですみません。
でも、どのお話もだいぶ方向性の違う、味の濃い作品であると、少しでもお伝え出来ていたら幸いです。
きっと「私の学生時代、こうだった」と親しみを感じて頂ける作品が見つかると思います。
『あのころの、』、本屋さんでお見かけの際には、どうぞよろしくお願いいたします!
(文責・彩瀬まる)
文芸あねもねに関するエッセイ掲載のお知らせ
2012.03.29 Thursday | category:告知掲載などの情報
お久しぶりです、山本文緒です。
昨年7月に電子書籍でスタートした「文芸あねもね」は、今年2月・新潮文庫として生まれ変わり、さらに大勢の方に手にとって頂くことができました。本当にありがとうございました。
電子書籍と紙の本と両方買って下さった方も沢山いらして、とてもとても感謝しております。
デジタルの本とアナログの本、それぞれの良さがありますよね。
「文芸あねもね」は電子書籍での発売時に、沢山の出版社が紙媒体で宣伝をして下さいました。
今はツイッター、フェイスブック、メールマガジンなどの様々なネット上のサービスで大きな広告効果が望める時代ですが、やはり紙の新聞や雑誌の力はとても大きいです。
デジタルコンテンツとしてスタートした「文芸あねもね」ですが、アナログの大きな力にも支えて頂き、ここまでくることができました。
広告して下さった紙媒体のひとつに、札幌にある寿郎社さんという出版社があります。昨年の夏、自社の新聞広告の一部を割いて、あねもねを宣伝して下さいました(宣伝ご協力へのお礼その9)。
みなさん、新聞広告の広告料っていくらくらいかご存じですか?
あれはものすごーく高いのです。国産車が複数台買えちゃうようなお値段なのです。
広告の一角といえども原付なら2、3台は買えるような価値のあるスペースなのですよ。
わたし達の活動を応援して下さり、それをポーンと文芸あねもねに下さった寿郎社さん、太っ腹です。その節はありがとうございました。
さてその寿郎社さんが発売元をしている文芸誌『季刊メタポゾン』最新号(5号)で、今回わたくし山本文緒が「文芸あねもねの冒険」というエッセイを書かせて頂きました。
「文芸あねもね」が企画され、電子書籍での発売から紙の本に変わってゆく過程で感じたことを、いつもよりのびのびと書かせて頂きました。
ここでちょっと話は個人的なことになるのですが、どうして札幌の出版社がそこまで親切にしてくださるかというと…わたしは以前札幌に部屋を持っていまして、そこで寿郎社の社長さんとのご縁ができたという経緯があるのです。
札幌のことはエッセイにも何度か書いたのでご存じの方もいらっしゃると思います。残念ながらほんの少し前に事情があってその部屋をとうとう引き上たのですが、札幌に部屋があった12年間、素晴らしい出来事や、貴重な出会いが沢山ありました。
そのことは長い話になるので、いつかどこかで書きたいと思っています。
札幌での出来事の中で、一番私にとって素晴らしい出会いだったのは、作家の北大路公子さんと親しくして頂いたことでした。
北大路公子さん、ご存じですか? 知る人ぞ知る作家さんなのかもしれませんが、わたしは彼女の昔からのファンで、お会いできた時は「この人が、あのモヘジ!」と感激しました。ご存じない方は是非、公子さんの力が入っているのかいないのか絶妙な味のエッセイをお読み頂ければと思います。最新刊はこちら。
その北大路さんのエッセイに多出する編集KP氏というのが寿郎社の社長です。
そういう縁があって、彼女たちとは札幌で飲酒・温泉・ジンギスカン・ドライブと、申し訳なくなるくらい遊んで頂きました。
『季刊メタポゾン』の大きな売りのひとつは、北大路さんの小説が読めることだとわたしは思います。
彼女はエッセイストと呼ばれがちですが、わたしは「この人はしみじみ小説家であるなあ」と感じています。
北大路さんとKP氏との札幌でのあれこれは、今年の5月末に増補新装版となって発売される『枕もとに靴』と『最後のおでん』の巻末に、北大路さんとわたしの対談が収録される予定ですので、その時によかったら手にとって下さいませ。
話を戻しますと、「メタポゾン」というのは英語メタ(新たな)と哲学用語ポゾン(既に在る)を合わせた造語で、「古いもの新しいものの協働で高次元の別の何かを」の意が込められているそうです。
一般的に雑誌というのは読み終わったら処分してしまうケースが多いと思いますが、この『季刊メタポゾン』は単行本と変わりなくずっと本棚にとっておきたくなるような、じっくりと紙と活字に向きあいたくなるような贅沢な作りなのです。
最新刊の5号には、北大路公子さん、小路幸也さんの小説、佐々木譲さんのツイッター日記と佐々木さん撮り下ろしの写真、三浦しをんさんのエッセイ、西原理恵子さんの漫画、表紙&4コマ漫画に常盤雅幸さんという贅沢なラインナップです。
アナログの良さを最大限に極めようとしている『季刊メタポゾン』にもしご興味を持たれましたら、大きい書店さんで一度手にとってみてください。残念ながら発行部数的に小さい書店さんで見つからないと思いますので、街に出たついでに大型書店の店員さんに尋ねてみてくださいませ。あるいは寿郎社さんに直接問い合わせるのがよいかと思います。
(文責・山本文緒)
